238号 感話:どうして人を殺してはいけないの? [ 令和6年10月1日 ]
朝は秋の空気を感じます
稲刈りを間近に控えて強い雨が降ると稲が転んでしまい、お米の品質に影響がでるのだそうです。8月下旬に台風10号が迷走し、私たち新潟教区が担当して開催予定だった保育連盟の大きな研修会が中止を余儀なくされました。準備を重ね本番を迎えるだけの状況で中止を決断するのは辛いことでした。連日の天気予報がどんどん変化し、振り返ってみれば台風の進路は予測不能だったのです。つい最近の台風14号もまた進路予想が大幅に外れて能登半島は震災被害から復興がままならない中で今度は大雨の被害に見舞われました。「心が折れました」の被災者の声に言葉を失います。
異常気象は、従前のデータが天気予報に役立たなくなるほどに深刻になっているということでしょうか。自然災害はどうすることもできないかもしれません。でも異常気象が私たちの日常生活に起因しているとすれば人為災害かもしれません。
こども園秋の彼岸会
お念仏は「ナモアミダブツ」ですか、「ナムアミダブツ」ですか。うちの孫がこども園でお世話になっております。親と一緒に我が家に来るやお仏壇に座り「ナモアミダブツ」というんです。私は普段「ナムアミダブツ」といっているのですが、「はて?」
これはこども園の彼岸会行事-祖父母をお招きして-での参加者の声です。嬉しかったです。私の回答:どちらでもいいんですが、お東は「ム」、お西は「モ」と言います。
第3回日曜法座研修会 9月15日
ご講師に田子祐子(さちこ)さん(本願寺派布教使 巻組一心寺住職)をお迎えしてご法話をいただきました。「浄土真宗の利益(りやく)」がテーマでした。「わが家では寺の子だから神社に行くなとは言われませんでした」と振り返られ、私の子ども時代と重ね合わせました。ご利益と言えば、神仏にお願い事をして、それが叶うこと、のように受け止められます。浄土真宗ではどのように受け止めるのでしょうか。託念寺に恵以真会がありますが、この由来は仏説無量寿経にある「恵以真実之利(えいしんじつしり)」:「仏がこの世にお出ましになるのは、人びとにまことの利益を恵みたいと考えられたからです」にあります。「まことの利益」こそが「浄土真宗の利益」です。田子先生は手塚治虫原作「ブラックジャック」を喩えに出されて、説かれました。そのお話は講談か落語のかたりでした。ドラマチックなストーリーに引きこまれ、気がつけば「お金といのちを天秤にかける」私たちの日ごろの心の有り様に向き合うことに導かれていました。今年6月にテレビ朝日で放映され反響を呼んだ高橋一生主演の同名のドラマが見たくなりました。あらすじはネットで追うことができます。田子先生の本題に迫るには田子先生のお話を聞くことでしか再現できませんが、どうぞ「真実の利益」を自問する機会につなげていただきたいと思います。
秋彼岸会家族礼拝 9月22日 今井和江さん(紙芝居塾主宰)
久しぶりに拍子木で始まる紙芝居観劇でした。演題は2つ:「おだんごころころ」と「みちこのいのち」 お彼岸にあわせてお団子とお地蔵さまが登場します。心優しいおじいさんと欲張りおじいさんの昔ばなしは子どもの頃から何度も聞いてきました。お彼岸の過ごし方であり、心が豊かに成長する貴重な時間であったと懐かしむことができました。「みちこのいのち」は長岡空襲のものがたりです。七里アイさんの体験談をもとに 脚本:今井和江・諸橋精光 絵:諸橋精光 として紙芝居に制作されたものです。長岡市内すべての小学校に納められ平和教育の教材になっています。来年は空襲から80年を迎えます。七里さんは生前長岡花火を楽しめなかったそうです。今井さんの空襲警報の声は三尺玉を知らせるサイレンのように聞こえました。七里さんに繰り返し確認して恐怖を思い起こさせる音が再現できるようになったそうです。みちこさんをオンブして柿川に飛び込み、火の川を逃げ惑い、やっと静かになった時、幼いいのちと向き合う悲しみがそこにありました。白い菊の花火は決して忘れてはいけないいのちへの追悼ですと結ばれました。
感話 どうして人を殺してはいけないの?
ドキッとします。朝ドラ「虎に翼」が最終回を迎えます。今日の寅子(ともこ)の演技も迫真でした。家裁の役割を問う内容でドラマが進行しています。売春や窃盗をそそのかす罪で補導された女子に、罰を与えることなしに更生を手助けする関わり方があるはずと、模索する寅子。人が人の温もりで心を動かす必死の姿が見えました。
個人の尊重、法の下の平等、差別をうけない社会の実現など主人公が生きた時代に起きた具体的な事件や事柄を取り上げて、現在の私たちに自分の問題として考えるように促してくれています。寅子は憲法に照らして苦悩しますが、坊さんである私は仏法に照らして言葉を発しようとします。そもそも法とは「真理」のことです。いのちの尊厳も、個の尊重も、平等も仏法は説いています。どれほど真剣に受け止めているのでしょうか。自問しています。親鸞聖人の向き合い方は命がけだったに違いありません。合掌
欄外付録
託念寺当院(鷲尾顕一)の写真展が新潟市南区白根の「SHIRONE PRESSO」で開催されています。
ご案内させていただきます。どうぞ足を運んでいただけたら幸いです。