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218号 感話:丁野惠鏡先生を偲ぶ -いのちを大切にするという課題- [ 令和5年2月4日 ]

一級の寒波

218号 感話:丁野惠鏡先生を偲ぶ  -いのちを大切にするという課題-  「50年に一度級の寒波」は、大袈裟な表現ではなかったようです。新潟県内は1月25日の一日中、観測点のすべてで氷点下だったそうで、これは2000年以降でははじめてのことだと報じていました。我が家でも異変が。夕方、お風呂の準備をしようと脱衣所に入ると寒暖計は氷点下を表示し、お風呂場はシャワーにつながる水道管が凍りかかって、しばらくの間チョロチョロ状態。危うく全面凍結になるところでした。この便りが届く頃には寒波が過ぎ去り、春近しを実感できたらいいと願います。


年始総会の御礼

218号 感話:丁野惠鏡先生を偲ぶ  -いのちを大切にするという課題-  1月2日は比較的穏やかな天気に恵まれました。大勢の皆様にお参りをいただいてお正信偈をお勤めいたしました。昨年一年を振り返れば、コロナ感染が依然として収まらず、ロシアのウクライナ侵攻は終わりが全く見えない状況が続いています。さらに安倍元首相の銃撃事件に端を発し、旧統一教会の多額寄付金問題が大きく取り上げられました。私どもの寺院も門信徒のご懇志によって支えられていることを思えば、宗教とは何か、信仰とは何かが改めて問われていると言えます。
 総会では事業報告、前年度決算、今年度予算が審議され、承認いただきましたが、寺院維持費としてお願いしている額も決して小さくありません。浄土真宗のみ教えをよりどころとして、今日一日の生活が少しでも豊かに感じられるよう、明日に希望が持てるように、寺としての役割を果たさなければならないと思いました。
 これまで永年世話方および総代を勤めていただいた吉原松雄さんが退任され、後任の世話方として吉原正博さんにご就任いただきました。吉原松雄さんには、住職三代50年間の長きにわたるお取り持ちご支援に感謝しかありません。ありがとうございました。吉原正博さん、どうぞよろしくお願いいたします。


すずめの戸締まり

218号 感話:丁野惠鏡先生を偲ぶ  -いのちを大切にするという課題-  東日本大震災から12年。13回忌の年にあたります。中越地震から19年、阪神淡路大震災から28年、それぞれがそんなに遠くの出来事とは思えません。それだけ衝撃が強かったということでしょうか。昨年暮れに映画「すずめの戸締まり」が話題になっていることを知りました。お正月に孫娘がきていたので、是非とも一緒に映画館に行こうと思い立ちました。孫を真ん中においてヂヂとババが両脇に座って映画を観る、なんとも仕合わせそうな光景です。小五の孫が「ああ、感動した」と映画館を出て満足そうに言ってくれました。新海誠監督のアニメ映画です。映像も進化していますね。その迫力に圧倒されますが、何と言ってもストーリーです。入場者一人ひとりに「小説すずめの戸締まり」がプレゼントされました。これが見終えた後の感動パート2になりました。東日本大震災で母親を亡くした少女鈴芽(すずめ)と、ただ一人の肉親で母親代わりになったはずの叔母環(たまき)、そして津波に流されて奇跡的に見つかった母親手作りの椅子のものがたりが収められています。
 大震災から2ヶ月、鈴芽5歳の誕生日。お祝いのパーティーが終った夜遅く、母親を突然奪われて、その喪失感を自分でも気づかずに、母親が残してくれた椅子にその寂しさをぶつける鈴芽の姿がありました。叔母の環は、切なくて、また環自身も自分の大切なものを皆犠牲にして母親になろうとしてたのに鈴芽と心(しん)から親子になれない悔しさに涙します。そして10年が経って、鈴芽が突然家出をしました。・・・・
 あの大震災は、誰に代わってもらうこともできないかけがえのないいのちを奪い取ってしまいました。それは10年の時が経過しても消えることはなく、それでも残されたものはそれを乗り越えて生きていかなければなりません。必死に生きようとする二人のいのちに感動します。


感話 丁野惠鏡(ようのえきよう)先生を偲ぶ -いのちを大切にするという課題-

218号 感話:丁野惠鏡先生を偲ぶ  -いのちを大切にするという課題-  去る1月18日に本願寺派保育連盟教育原理委員会が3年ぶりに対面での開催となり、その席で丁野惠鏡先生のご訃報を知ることになりました。丁野先生とは不思議なご縁で、私の父が40年以上も前に保育連盟でお世話になり、私の長男が龍谷大学でご指導をいただいていました。丁野先生は父のことも長男のことも覚えててくださり、私は初対面のときから旧知のように感じていました。教育原理委員会委員長も先生の後を引き継がせてもらいました。


 数年前、築地本願寺で開催された保育セミナーパネルディスカッションでご一緒させていただきました。私が司会を務め、パネラーの丁野先生の第一声は「これからお話しすることは私の遺言だと思って聞いてください」でした。そして一番に「いのちを大切にするという課題」を掲げられました;
 「地球上の70億の人間のいのちは、誰もがたった一つのかけがえのないいのちです。代替えができません。道具が役に立つかどうかで価値が決まるのに対して、いのちこそは、存在するだけで意味がある、大切なものなのです。なのにひとはケンカをしてひとを傷つけ、ときにはひとのいのちまで奪う恐ろしい罪を犯してしまいます。世界に目を転じれば、現代でも世界のどこかで人間を奴隷のように売買したり、あたかも道具のように戦場にかりたて、多くの尊いいのちを犠牲にする出来事が後を絶ちません。生きものの進化の歴史は、一面、弱肉強食を生きぬいた勝者の歴史ともいえます。しかし強い者が常に弱い者の上に立つ社会は、殺し合いを繰り返す社会となりましょう。紀元前の昔にお釈迦さまは、平和を実現するために、誰もが共に仏の子として敬い合い、互いに認め合い、助け合うことの大切さを説かれたのです。」(「真宗の教えとまことの保育」に学ぶ 2017 より)
 熱心に語られた先生のお顔が思い起こされます。いのちには同じものがありません。驚くほどに多様です。その一つひとつがもれなく、例外なしに尊いと敬うことが仏法の大原則です。これから地球を担っていくであろう子どもたちの仕合わせをいつも念じ続けられた先生の遺志を私も子どもたちに伝えたい。


町内の雪景色

218号 感話:丁野惠鏡先生を偲ぶ  -いのちを大切にするという課題-


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