194号 感話:1枚の写真 [ 令和3年2月2日 ]
三度の寒波と大雪
12月中旬に関越自動車道の大渋滞を引き起こした初雪寒波、大晦日から正月にかけての年末寒波、そして大風後豪雪寒波に見舞われました。1月8日のお寺ヨガと10日の日曜法座は中止に致しました。大晦日除夜の鐘撞きは最も強く降った時間帯と重なりました。こんな中、恵以真会の男性役員の方々が火を焚いて御仏酒を振る舞ってくださいましたが、さすがに例年よりは少なめの参拝になりました。除夜の鐘撞きをされた方、遠くに聞こえる鐘の音をおうちで聞かれた方、それぞれに新しい年へ思いを新たにされたことでしょう。
この冬三度目の寒波では屋根の雪下ろしを急遽お願いすることになりました。長岡で最大150cmを超えました。上越市や十日町市などでは250cmを超え、どんな状況だったのでしょうか。ドイツに住む弟はニュースで知ったと心配して電話をくれました。右の写真は雪下ろしを終えた後の記念撮影です。屋根に届きそうな雪の山でやり終えた笑顔です。私はいつも自分の非力を思い知る作業ですが、経験豊富な先輩方と力あふれる若手の皆さんに助けられて危機と不安を乗り越えることができました。ありがとうございました。
年始門徒総会の御礼
密を避けるために1月2日に午前・午後の二部制をとって修正会(しゆしようえ)のお勤めと年始総会を開催致しました。前年度決算、今年度予算、事業計画等をご承認いただきありがとうございました。さらに1月24日に任期満了を迎える責任役員および門徒総代についても全員再任でご承認いただきました。今後ともよろしくお願いいたします。世話方については任期はありませんが昨年末で前島町の堀井保彦さんが退任され、室橋靖裕さんに新たにご受諾いただきました。堀井さんには40年以上にわたり寺の護持のためにお取り持ちいただき心より御礼申し上げます。室橋さんには、堀井さんが担当されていたところを引き継いでいただきますのでどうぞよろしくお願いいたします。
今年度がどのように事業運営できるか見通せない状況ですが、このようなときこそ、人と人とのつながりを大切にし、浄土真宗のみ教えを拠り所として念仏者としての生活を心がけたいと思います。
人を思いやること 笑顔を絶やさないこと ありがとうのことばをかけること
写真は、元旦の朝です。大雪の年始めでした。
感話 1枚の写真
何の写真か分かりますか。戦時下武器生産のために昭和16年、金属類回収令が出され、さらに寺の梵鐘や仏具に目がつけられ翌年には強制譲渡命令が発動されました。託念寺でも、今は立派な鐘楼が建てられ梵鐘がつるされていますが、昭和17年に供出されたと伝えられています。当時はまだ建てられて数年しか経っておらず、その後は「鐘撞堂」がその主を失ったままに40年近く立ち続けていました。
この写真は、長岡市仏教会史編集作業の中で提供されたものです。どこのご寺院で撮影されたものであるのか記されていませんが、仏具供出命令が出て各寺院から運び出され、それが一つの寺院に集められ、その仏具の前で読経をしている写真であることは間違いありません。戦況が厳しさを増す中、鉄砲や大砲の弾も不足して、何でもかんでも回収されてしまいました。梵鐘の供出はよく知られたことですが、ろうそく立ても花瓶(かひん)も金(かね)目(め)のものは皆回収されてしまいました。それにしても夥(おびただ)しい数の仏具がならんでいます。当時の写真の中にはリヤカーに仏具を乗せて本堂の前で撮られたものもあり、「仏具奉還」と書かれた看板が写っています。強制的に供出させられたにも拘わらず「奉還」と書かなければならなかったのです。悔しいですね。
写真がどこのご寺院であるのか、編集委員会でその手がかりを探しましたが、浄土真宗の寺院だろうと推測するにとどまりました。この本堂に見覚えのある人は誰もいないからです。それはこの寺院がその後の長岡空襲で焼けてしまったからです。読経中に、このお堂がやがて米軍による空襲でそっくり焼かれてしまうことを誰が予見できたでしょうか。なんともやりきれなくなります。
長岡空襲で1488名の市民が犠牲となり、罹災戸数は1万戸を超えました。市内のご寺院は41ヵ寺が全焼しました。宮内の万休寺様は本堂の大きな柱がいつまでもくすぶり続けていたとお聞きしました。
戦争とはなんと愚かなことであろうか。いったん始まってしまえば、異を唱えることも許されなくなります。終戦後焼け野原となった長岡復興の中で戦災殉難者の追悼法要がいち早く勤められました。ご本尊様も仏具も法衣も整わないままに、戦争を二度と繰り返してはならない強い決意が示されてきたのです。仏教会史編集のお手伝いをさせてもらって改めて気づかせてもらったことです。なお、この本は「長岡市仏教会ものがたり」として今年夏には出版されます。
今年の法語カレンダーを解説している「心に響くことば」2月編に、戦争体験のお話しが載せられています。日曜法座でも味わいたいと思いますが、ご一読ください。容易に語れない慚愧の物語です。合掌