185号 感話:コロナ禍を乗り越える「エール」 [ 令和2年5月1日 ]
皆様 いかがお過ごしですか
いつもなら「新緑がまぶしい季節になりました」と書き始めて、やっと暖房から解放されて初夏のよろこびを共感する文面を考えているはずなのに、そんな状況ではありません。何年かしてこの災難から抜け出られて平穏が戻ってきたときに、この非常事態の辛さが思い出せるように、このときに考え、味わった思いを忘れないように書きのこしておきたい気持ちがあります。
手帳を開くと、4月、5月は書き込んだ予定が軒並みばってんがつけられて取り消しにされています。「人との接触を最低7割、極力8割減らすように」と繰り返し呼びかけられていますが、減らしたというより気がついてみたらそれくらい減っています。NHKBS「偉人たちの健康診断」という番組で見た永井荷風の長生きの秘訣を思い出しました。それは「教育と教養」と紹介されましたが、その意味は「今日行く(キョウイク)ところがあり、今日用事(キョウヨウ)があること」でした。それを聞いたときはうまいもんだと思いましたが、今はそれを実感しています。予定通りにそれぞれの場所に出向けば、そこでお会いできる人がいます。それがどんなにか毎日の生活に潤いをもたらしてくれていたことか。改めて感じています。
今こそ和顔愛語
岡江久美子さんがコロナウイルス感染症で亡くなったというニュース速報を車の運転中に聞きました。次々と続報が入って紹介される中、スタジオで同じように速報を聞いているゲストやアナウンサーが絶句状態に。私も岡江さんといえば自然に和んでくるあの笑顔が思い浮かんできます。あの笑顔の人が突然にコロナウイルスに命を奪われた悲しみは、あの笑顔ゆえにか衝撃でした。
こんな時こそ和顔愛語が大切と気づかされました。日報抄(4月25日付)に、日本赤十字社が訴えた三つの顔のことが紹介されていました。三つの顔とは「病気そのもの」「不安と恐れ」「嫌悪や偏見、差別」です。このウイルスの本当の怖さがまだ分からず、それだからこそ感染拡大を抑えるために人との接触を避けよといわれます。長岡市は3月21日に一人の感染者が報告されて以来出ていないので、それほど大きな心配をしなくてもいいと思ったこともありました。でもその油断が一番危険です。そうです。その通りです。
そして人との接触を避けていると、ストレスが大きくなり、マスコミ等に影響されて特定対象への嫌悪感をつのらせて、自分自身が不機嫌になってしまっています。不機嫌はとても怖いこと、恐ろしいことです。人を不愉快にします。わけも分からず不機嫌になってそれを伝搬させていることに気づきます。最近になってDVのことが取り上げられています。DV被害が大きくなっていると。やり場のない不機嫌は弱者へ発散されるのかなと思います。負の連鎖とはこういうことかと思います。
嫌悪・偏見・差別の対極にあるもの、それが和顔愛語です。こんな時こそ、笑顔や思いやりの言葉を心がけましょう。日報抄は、「暗いニュースばかりに浸らないように。そうすることで恐怖にのみ込まれないようにしよう-」と赤十字社の呼びかけを紹介し、「ぴりぴりとした世間に笑顔で潤いを加えたい」と結んでいます。
冬囲い外しを終えて笑顔
4月5日(日)冷たい雨の中でしたが、朝6時前から作業が始まりました。三密を避けながら、笑顔を絶やさず、和気あいあいの気持ちを感じながら、無事に終えました。恵以真会の皆様OBの皆様ありがとうございました。
託念寺お取越し報恩講中止のお詫び
真宗寺院としては最も大切な法要ですので申し訳ない思いでありました。
改めて親鸞聖人がお示し下さったみ教えをこの難局の中でお訪ねしたいと思います。共に生きること。多くの支えの中でいかされていること。決してひとりではありません。また寺で集いましょう。
感話 コロナ禍を乗り越える「エール」
4月からNHK朝の連ドラで「エール」を放送しています。主人公のモデル古関裕而は、東京オリンピック入場行進曲や戦後復興期に歌われた「長崎の鐘」などが有名ですが、私にとっては「しんらんさま」が想い出の曲になっています。私より年配の方々はきっと知っておられます。真宗教団連合が親鸞聖人700回大遠忌(昭和36年)の記念事業として歌詞を募集し、作曲は古関裕而に依頼し、当時大スターだった島倉千代子が歌ったのです。あの当時はレコードだったのでしょうか。カセットテープで何度も聞いた記憶があります。みんなで歌える曲です。愛唱歌でした。今もこの歌詞が自然に口から出ることがあります。母が施設でお世話いただいたときに一緒に歌った曲の一つでした。歌詞を掲げましたが、日曜法座があれば間違いなく皆さんと一緒に歌いました。CDがありますが、島倉千代子ではありません。ぜいたくを言えば島倉千代子の歌がいいなぁ。
「エール」は励ましですが、「しんらんさま」のエールは「頑張れ」と激励するのではなく、いつもそばにいますよという寄り添いのエールです。「ナモアミダブツ」はそんな寄り添いのエールだったのです。合掌
しんらんさま 歌:島倉千代子 滝田常晴 作詩 古関裕而 作曲
1)そよかぜわたる あさのまど
はたらく手のひら あわせつつ
南無阿弥陀仏 となえれば
しんらんさまは にこやかに
わたしのとなりにいらっしゃる
2)きらめく夜空 星のかげ
あらしにきえても かくれても
南無阿弥陀仏 となえれば
しんらんさまは ともしびを
わたしのゆくてに かざされる
3)この世の旅の あけくれに
さびしいいのちを なげくとき
南無阿弥陀仏 となえれば
しんらんさまは よりそって
わたしの手をとり あゆまれる