174号 感話:どんないのちも尊い [ 平成31年6月4日 ]
6月です
5月25日に前川小学校で運動会が行われました。前々日長岡市黒崎小学校で運動会の練習中に大勢の児童が熱中症にかかり、それが全国ニュースで報じられました。その時の長岡市の最高気温は25℃くらいでしたから決して猛暑だった訳でもありません。そして25日は30℃を超す予報が出されていました。幸い前川小学校の運動会は無事に終わりましたが、校長先生はじめ運営される関係の皆さんはさぞかし神経を使われたことと思います。
私は応援合戦までしか見られませんでしたが、きびきびと動いてとてもよかったです。お疲れ様でした。
北海道では記録的な猛暑が報じられました。5月に北海道で39℃を超えるのは驚きです。異常気象が頻繁に報じられると、もはや異常ではなくなります。それが怖いです。体調管理に気をつけましょう。
寺にはお花が届けられました。サポナリアというお花です。見事でした。
宇良関のこと
大相撲夏場所が終わりました。優勝した朝之山には早くも風格を感じます。朝之山といえば、豊山です。ライバルのように言われていたのにどうしてこんなに差ができてしまったのでしょうか。ケガが完治していないのでしょうか。また、この場所、期待された貴景勝がケガで途中休場したことが残念でした。大相撲はケガが多すぎます。稀勢の里も結局はケガで引退に追い込まれました。ケガのことで気になっている力士がいます。宇良です。小兵で動きが速く体も柔らかいので土俵際に追い込まれても逆転で勝利をつかんでいました。平成29年秋場所、膝靱帯断裂で途中休場して、以後5場所全休して三段目まで落ちてしまいました。30年秋場所にようやく復帰して11月九州場所には三段目で優勝してニュースになりました。ところが、このまま順調に回復すればもう幕内に名を連ねてもいいはずなのに、十両にすら名前が見えないのです。私は朝之山優勝のニュースのあとで宇良を検索してみました。なんと今年の1月初場所で再び同じ膝靱帯を断裂していたことが分かり、とてもショックを受けました。まだ復帰の目途も立っていないそうですが、本人は希望をもってリハビリに向き合っているとネットは伝えています。幕内に戻ってもう一度この欄で紹介できる日が来ることを楽しみにしています。
悲:痛みを共にできるやさしさ
日曜法座で5月の法語を味わいました。「心に響くことば(本願寺出版社)」から「足の小指をタンスの角(かど)にガツンと打ち付けたんです。打った瞬間『いたたたたたぁ』と叫びました。」を紹介しました。「慈悲」という仏教用語は「慈」と「悲」と別々の意味を持っていて、「いたたたたたぁ」の叫びを「悲」といいます。このような痛みを経験すると、「いたたたたたぁ」の叫びを聞いて、他人事と思えない「痛み」を覚えます。ひとの痛みが共にできたら、ひとはそれを「優しさ」と呼ぶのだと思います。
宇良関のことに戻ると、今の痛みは、また再び土俵に上がれるのだろうか、と不安を感じる心の痛みの方が大きいかも知れません。ケガの痛み、リハビリの道のり、そして再起への不安。それらを乗り越えて宇良さんがきっと大きな人になられることを信じて応援しています。私の願いが届けば嬉しいです。頑張ってください。
感話 どんないのちも尊い
仏教が教える生きものへの見方です。教えの大前提になるものを「法」と表現します。ものごとの真理です。ですから仏教といわずに「仏法」と表現することが正しいと思います。
仏法の大前提の一つは「一切衆生悉有仏性(いっさいしゅじょうしつうぶっしょう)」です。生きとし生けるものはすべて仏の心を有している。「どんないのちも尊い」ということです。私たちは保育園で「お米一粒(ひとつぶ)一粒に仏さまがおられるのです」と子どもたちに伝えています。これは、科学的に証明する対象ではなく、これが仏法の大前提なのです。これが出発点です。学校で勉強を学ぶ前に私たちが学ぶべきことです。
保育資料6月号(本願寺保育連盟刊)に「雑草という草はない 害虫という虫もいない みんな人間の都合」が今月のことばとして載っています。小池秀章先生はその説明文の中で「未だ人間によって、その価値が認められない草のことを、人間によって、その価値が認められるまでの間、雑草と呼ぶ」と、雑草を定義した一例を紹介されています。煎じて飲んでガンに効くと分かったら、雑草から薬草へ「昇格!」です。実際、植物にはその種にすべて名前がつけられていて、名前のつけられていないものを発見したら「新種」として新たな名前がつけられることになります。
小池先生は、雑草も害虫も人間にとって役立つか否かによって名付けられていて、人間中心の見方ですとおっしゃっています。
今の季節は、植物も動物もたくさん目にすることができます。散歩して小さな虫を見つけたり、川を泳ぐサカナも発見するかも知れません。「どんないのちも尊い」ことを子どもたちと一緒に味わいたいと思います。尊いいのちは毎日のごはんの中にもあふれています。それをいただいていることをご家族一緒に感謝いたしましょう。
「とくとくとく」は本願寺出版社から出ている絵本です。本願寺新報に広告記事として書かせていただきました。