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152号 感話:補欠たちの引退試合 [ 平成29年8月5日 ]

お盆に先祖を想う:託念寺の宝物「発見」

152号 感話:補欠たちの引退試合 郷土史「前川のあゆみ」が一昨年12月に刊行されました。そこに託念寺の歴史についても記しました。歴史は言い伝えと共に、物や品、さらに記録に遺されていることが手がかりとして大切です。しかし、大事に保管してもいつか忘れ去られるかも知れません。恵信尼(えしんに)さまが末娘覚信尼(かくしんに)さまに宛てて書かれたお手紙が大正10年、本願寺の蔵から「発見」されました。「発見」といっても蔵にあったのですから保管されていたものでした。しかしその存在がいつの間にか忘れ去られていたのが本当のところだと思います。
 私は、「前川のあゆみ」に執筆するとき法宝物箱に入っているものをひとつずつ取り出して写真を撮りました。その中に「方便法身尊形 顕如師 明治14年9月表補仕替」と裏書きされた「阿弥陀如来絵像」があり、見ていたはずでした。


152号 感話:補欠たちの引退試合  第10代住職了凢(1860-1919)は託念寺精舎記録を薄い冊子にまとめていてそれが遺されています。これは明治14年2月に寺が火災に遭い、大切なものを失ってしまったので備忘録的に書き留めていたもののようでした。その冊子には第9代住職祐了(1831-1890)の事跡として「開祖専念ノ御持佛无上佛御影・蓮如上人御影表具替・廣如上人御染筆六字尊号御申」とあります。この記述があるにもかかわらず、私は、「専念御持佛无上佛御影」は焼けて現存しないと思い込んでいました。このたび「発見」した明治14年9月表補仕替の阿弥陀如来尊像お軸は、あまりに見事な色彩で、これが400年以上経ているものとは思えないものです。そんなこともあり「前川のあゆみ」では、寺院火災の折焼失したものと記述していました。来年は了凢さんの百回忌にあたります。了凢さんゆかりの法宝物、遺品を展示して法要を勤めたいと思っています。なお、顕如上人(1543-1592)は、石山本願寺10年戦争で織田信長と戦ったことで有名です。開祖専念とは1500年代後半に富山生地(いくじ)より前島に移り草庵を建てたと伝承されています。


盆参とお墓参りを前に境内草取り

152号 感話:補欠たちの引退試合  恵以真会のお声かけで7月22日境内草取りを行いました。連日の暑さ続きでちょっと動いただけで汗が流れます。大勢の皆さんのご協力できれいになりました。これでお盆が迎えられます。ありがとうございました。
 昨年8月のてらだよりで「今年のお墓参りは『しんじんのうた』をお勤めされませんか。聖典とお念珠そしてお仏壇のおりんもご持参して。」と書きました。今年もどうぞ実践してください。本堂に貸し出し用おりんを置いておきますのでどうぞご利用ください。
 なお、8月1日から本堂にて「風の谷 フンザ」ミニ写真展を開きます。当院が今年五月に訪問したパキスタン山岳地帯とそこに暮らす人々の写真です。お墓参りの折にお立ち寄りください。


感話 補欠たちの引退試合

152号 感話:補欠たちの引退試合  NHK新潟放送局がニュースで特集して反響を呼びました。そして7月23日朝の全国ニュースで再び特集が組まれました。小郷知子キャスターのナレーションで再構成された新潟工業高校3年生の笹口君のひたむきな姿に胸が熱くなりました。
 折しも23日は託念寺日曜法座で「本願力に遇いぬれば 空しくすぐる人ぞなき 功徳の宝海みちみちて 煩悩の濁水(じょくすい)へだてなし」がテーマでした。生老病死を四苦と言います。いのちを恵まれた者には、老い、病い、死んでいくのは避けられないことであるのに、若さ、健康、元気を保っていけることが幸せの条件だと思っていたら、人は不幸に向かって生きていくことになります。老病死が不幸なことではない、という人生観を持ちたいとお話ししました。
 補欠だった笹口君は、高校野球で活躍する選手を見慣れたものにとっては、小柄な選手です。どんなに頑張っても甲子園まで行ける選手には見えません。それなのにどうして朝練、夜練習とそこまで頑張るの?と尋ねたくなります。引退試合の前日、家族と夕ご飯を囲んで、見逃し三振だけはしない、全力でフルスイングをするからと誓います。それなのに本番でまさかの見逃し三振。ベンチにもどって監督にかわいそうなくらい叱られてしまいます。「お前は何のためにここまで頑張ってきたのか」と。そして回が進み笹口君に最後のチャンスが与えられました。こんどこそはとフルスイングした打球はショート正面。球場で必死に声援してくれた母親にカッコイイ場面を見せられずに終わった高校野球生活でしたが、こんなに素直でひたむきな高校生がいるのだと今思い出しても涙が出てきます。試合に出て、活躍して、コマを進めて勝ち進むだけが目的ではない。笹口君が多くの人に彼の姿で教えてくれています。


 法語カレンダーの解説書「心に響くことば」で著者がわが子に向けて書いている一節があります;
「どんな人生がこれから彼の前に展開したとしても、親鸞聖人のご法義に出遇い、自分の人生に訪れたさまざまなことの意味をたずねていってほしいと思います。その結果、人生の中で『どうしてもあのことがあってよかったとは思えない』ということがあったとしても、『ご法義を聞いておいてよかった』と思える日が必ず来ると思います。」 本願力に遇うことによって人生は決して空しく過ぎることはありません。合掌


 上の写真は、託念寺西側に広がる水田から保育園、寺をとりました。先月号にも同じから撮った写真を載せました。1ヵ月で大きく成長します。来月はきっと稲刈り直前です。


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