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150号 感話:パキスタン北部の桃源郷 日本人登山家が築いた友好の礎 [ 平成29年6月7日 ]

花まつりご喜捨の御礼

150号 感話:パキスタン北部の桃源郷 日本人登山家が築いた友好の礎  5月には長岡市仏教会花まつりが行われ、託念寺でもたくさんのご喜捨(寄付)のご協力をいただきました。総額42,900円を長岡市仏教会にお届けいたしました。こころより御礼申し上げます。
 孫を長岡市の花まつりに参加させて「お稚児様」の姿を写真に収めました。今年は50名のお稚児様の参加がありました。孫が参加して初めて思うこと、気づくことがありました。子どもが一人参加すると平均3〜4人くらいの家族が一緒です。大体が稚児行列に連れ添って歩き、写真に収めたりしています。お稚児様あっての花まつりだと思います。今年は前川保育園からの参加は孫も含めて6名でした。私は稚児係を担当しているので嬉しかったです。来年はもっとお誘いしようと思います。
 花まつり実行委員長近藤龍弘さんのご挨拶に「花は形も色も違います。また咲く時期も違っています。みんなそれぞれが違ってそれぞれの役割を担い果たしています。同じように子どもたちもみんなちがってそれぞれの輝きを放っています。健やかな成長をお祝いいたしましょう」とありました。孫長男はもう10歳で参加できませんでしたが、我が家の写真係になってくれました。これもまた役割です。


人のために生き、人と共に生きる「一緒性」

150号 感話:パキスタン北部の桃源郷 日本人登山家が築いた友好の礎  本願寺宗報5月号に「理想の念仏者像を求めて−日本社会で求められる僧侶像・寺院像−」が特集されています。この内容は来月号で詳しく紹介したいと思いますが、こんな一文があります;
 「大乗仏教」では「慈悲」や「利他性」を重視します。これを現代風に言えば「人のために生き、人と共に生きる」ということです。「一緒性」という用語はそれを端的に示したものです。
 今月の感話は当院が担当してくれました。はじめて偉大な登山家長谷川恒男さんを知りました。今もパキスタンの秘境で現地の人と「共に生きている」日本人の物語でもあります。


感話:パキスタン北部の桃源郷 日本人登山家が築いた友好の礎 鷲尾顕一(託念寺当院)

150号 感話:パキスタン北部の桃源郷 日本人登山家が築いた友好の礎  5月の連休を利用してパキスタンに行ってきました。パキスタンと聞くとどんなイメージが湧くでしょうか。ガンダーラ美術やモヘンジョダロなどの歴史的に貴重な遺跡群、K2やナンガバルパッドなどの8000m級の高峰が連なるカラコルム山脈、ノーベル平和賞を受賞したマララさん。そしてネガティブな事象として、タリバンなどイスラム過激派によるテロ行為や、隣国アフガニスタンの紛争による緊張状態があります。パキスタンに行くというと、大体「え?大丈夫なの?」という反応が返ってきます。それが今のパキスタンの現状でしょう。私が行った地域の治安は安定していますが、やはり万人におすすめできるほど安全とは言い切れません。
 さて、私が目指した目的地はパキスタン北部、中国国境に近いフンザというエリアです。6000〜7000m級の山々と深い谷に沿うように町が点在する地域で、桃源郷と表現される美しい場所です。首都イスラマバードからおんぼろバスで23時間…まさに辺境の地です。苦労の末辿り着いた桃源郷は、その名に恥じぬスケールを持っていました。町から見える深い谷と高峰、町のすぐ裏手に見えるウルタル峰も7000mを超えます。ここはシーズンになれば世界中から登山家が集まるトレッキングの拠点でもあります。またジブリ映画『風の谷のナウシカ』の風の谷のモデルになったとも言われています。


150号 感話:パキスタン北部の桃源郷 日本人登山家が築いた友好の礎  長谷川恒男という登山家をご存知でしょうか。世界中で競い合うように未登頂の高峰を目指していた時代、このフンザにあるウルタル?峰登頂を目指し雪崩に巻き込まれて亡くなられた登山家です。フンザにはHASEGAWA MEMORIAL SCHOOLという学校があります。これはこの地と深い交流をしていた長谷川恒男氏の遺志を継いだ夫人が設立した学校です。今でも5歳〜15歳くらいの学生がきれいに維持されている校舎で学んでいます。
 私がこの学校を訪れた時、日本人というだけで歓迎を受け、学校の案内や校長先生と話す機会をいただきました。日本語の歌詞と伝統的な音楽をミックスした校歌もあります。一人の日本人の願いが形となり、今も多くの子どもの教育につながっているという事は、偉大な功績であり、日本人として長谷川さんの事を誇りに思います。


150号 感話:パキスタン北部の桃源郷 日本人登山家が築いた友好の礎  また私はこのウルタル峰のベースキャンプ地(3400m)をトレッキングで訪れました。ここには長谷川恒男さんのお墓があります。そこで私は念仏を、ガイドの男性は(おそらく)コーランの祈りをそれぞれ声に出して唱えました。異なる宗教の二人が異なる言葉で長谷川さんを想う気持ちを表現できたのです。仏教とイスラム教がこのような形で想いを共有できる。これは今までにない経験でした。彼は私が依頼したガイドですから親切にしてくれるのは当然かもしれません。しかしそれ以上のものが確かにありました。先人が積み上げてきた日本とパキスタンとの良い関係性の上に、またひとつ個人と個人の良い関係を積み上げることができたと感じています。
 あらゆる情報が簡単に手に入る時代です。パソコンやスマホで検索すればすぐ答えのようなものに辿り着きます。でもそれはいくつかある答えのひとつに過ぎなかったり、もしくは真実でなかったりします。私は訪れる国々で『百聞は一見にしかず』ということをいつも感じます。そしてその『一見』も大きな価値観の一部でしかない事を心にとめています。私が触れたのはパキスタンという国のほんの一端でしかありません。ですが現地住民との交流や親切にされた思い出はポジティブな印象としてずっと残り続けるでしょう。こうした異文化との良い関係性の積み上げが平和な世の中を作っていく…っていうほどきれいな世の中ではないと思いますが、長谷川恒男さんがフンザと良い関係で結ばれているように、世界は小さな結びつきから良い関係を築いていけるのではないでしょうか。偉大な日本人登山家 長谷川恒男から多くを学んだ桃源郷の旅でした。合掌


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