145号 感話:明日には紅顔あって [ 平成28年12月30日 ]
あけまして おめでとう ございます
新しい年が始まります。少しでも平和が感じられるような年になればと願いますが、現実は逆行しているようで不安です。今年の法語カレンダーは親鸞聖人のご和讃のことばです。親鸞さまは教行信証という漢文のご書物(ご聖教)を遺されました。そして70歳を過ぎてからはご法義を分かり易く多くの人に理解してもらおうとして七五調のうたを多く作られました。その数500種以上、それがご和讃です。右上の一首は法語カレンダーの表紙に選ばれたものです。今年は日曜法座でご和讃を味わいたいと思います。初めての方もどうぞお参りください。お仲間ができます。お待ちしています。
今年は酉年ですね。右の切り絵は地蔵堂組の山宮さんにいただきました。山宮さんはご法義のお仲間でてらだよりも毎月届けさせてもらっています。細かな手作業であることが想像されますが、見事な出来映えです。浄土真宗では干支(えと)をあまり取り上げないのですが、「とり年」で思ったのが共命之鳥(ぐみょうのとり)です。阿弥陀経に出てくる6つの極楽鳥の一つで身体がひとつで頭がふたつの鳥です。私たちはそれぞれが一つのいのちをいただいて別々の存在と思っていますが、共命の鳥はいのちは皆つながっていることをこの姿で説いているのです。個人のレベルだけでなく国と国の間でも同じことが言えます。お互いに相手の立場を思いやることをこの1年心がけていきましょう。
酉年に関ハナさん(摂田屋)の作品
関さんは今年91歳。毎年干支の木目込み人形を届けてくださいます。今年もいただきました。背後のこびとさんも。かわいいでしょ!
酉はさんずいをつけると酒になり、将軍の将をつけると醤油になります。酉の字には醸し出すという意味があるそうです。それぞれに自分らしさが醸し出されるといいですね。そんな努力をしたいと思います。
感話 明日には紅顔あって
右の一葉は昭和54年11月の全国仏教壮年大会でのものです(前住職遺稿法話集唯々聞法p11より)。本願寺で撮られた貴重な写真です。前々ご門主さまの後ろに吉原勇夫さんが、前ご門主の後ろに吉原勉さんが見えます。平成28年はこのお二人がお浄土に往かれ仏となられた年となりました。お二人はともに40年以上にわたって恵以真会を育て、お法りの輪を広げる努力を我が身を削りながらしてくださいました。「如来大悲の恩徳は 身を粉にしても報ずべし」を生涯を通して実践されました。
12月15日、門徒総代の吉原勉さんがお亡くなりになりました。あまりに急な出来事でした。その日ご親戚の葬儀を終えられ帰宅して数時間後のことです。翌朝私どもの前川保育園に勤めている長女瑞恵さんがいつものように出勤前に立ち寄られ、冷たくなっていた勉さんを見つけられました。
前日の葬儀は宮内地区で最も高齢の平澤竹代さんでした。行年107歳の御往生でした。勉さんはご親戚である平澤さんのご葬儀の最初から喪主の相談にのっておられました。ご自宅での七日三十五日忌法要が滞りなく終わって、私には翌日に予定されていた託念寺世話方会議のご心配までしてくださっていました。今ふり返ればどれほどナンギかったのでしょうか。「明日(あした)に紅顔あって 夕べには白骨となれる身なり」のご法義がそのまま現実になってしまいました。
勉さんは自分のナンギさを隠してでもご自分の役割を果たそうとされる方でした。6年前、前住職の葬儀のときがそうでした。前住職が亡くなった後にすぐに葬儀の段取りを陣頭指揮されました。その最中、勉さんが血痰をちり紙で隠すように拭き取られたことを思い出します。あの頃すでに肺のご病気にかかっておられたのです。前住職の葬儀を最優先され門徒総代としてのお役目を果たしてくださいました。
勉さんは、本山本願寺の新潟教区選出の門徒宗会議員を1期4年務められています。新潟教区130余ヵ寺からお一人だけ選出されるという要職です。私が住職になったとき、その務めが終えられたばかりでしたが、大事なご指導をいただきました。それは寺報(てらだより)を出すことでした。寺でどんなことをやっているのか。住職はどんなことを考えているのか、本願寺や新潟別院、寺の行事などもご門徒お一人おひとりにしっかりと伝えて欲しい。寺からの情報発信です。これは当時のご門主さまの願いでもありました。勉さんはお世辞の褒め言葉はおっしゃらない方でしたが、つい10日前の役員会議で「てらだより刊行」を来年の事業計画に明記して欲しいと言われました。これまでやってきたことを評価していただいたのだと嬉しく思いました。これまでのご恩をこころより感謝申し上げます。合掌
終い講で二胡演奏
平成28年最後の日曜法座で嶌津朝臣さんと堀井美子さんによる二胡演奏が披露されました。お二人は日曜法座の常連でもあります。この日のために何度も練習を重ねられました。日本のうた、中国のうたを織り交ぜて二胡の演奏を楽しませてくださいました。二胡の音色は哀愁を帯びています。とりわけこの日は吉原勉さんを偲びそんな哀しみと温かみを感じました。終い講は小林章栄さんがいつもお世話くださっています。お赤飯と豚汁とお持ちよりいただいたお漬け物を美味しくいただきました。1年間お参りありがとうございました。合掌