135号 感話:いい人間になろう [ 平成28年3月8日 ]
もうすぐ春
三月はまだ寒いですが、春が近づいた喜びがあります。保育園の片桐さんが毎年作ってくださる雪のひな壇です。十日町の雪祭りに負けていません。可愛い顔をして並んでいます。白い雪だるまに目と口がつくことでなんと可愛らしくなるのでしょう。それぞれがどことなく違った表情になっています。片桐さんはいつも子どもたちを喜ばせようと寒い中で作業をして下さっています。子どもたちは写真を撮ってもらい、またお迎えの時にはお母さんやお父さんに見せて歓声をあげています。
第20回家族礼拝の日(春彼岸会) 恵以真会主催
3月20日(日)朝8時〜9時 会場:託念寺本堂
1.おつとめ 「しんじんのうた」
2.モンゴルの風 馬頭琴演奏会
奏者:デルゲルマーさん
3.お茶タイム 彼岸だんご
4.梵鐘の撞き始め
「スーホの白い馬」という物語をご存じですか。馬と少年の心の交流を描いていてジーンときます。小学校低学年国語の教科書で紹介され有名になりました。モンゴルの民話で馬頭琴という楽器ができた由来として語り継がれています。デルゲルマーさんはモンゴル国立馬頭琴楽団の一員として活躍されていました。ご縁あって今、長岡市内在住です。馬頭琴の音色とともに、モンゴルの音楽や文化をお楽しみ下さい。
感話: いい人間になろう
世界があまり平穏とは言えない昨今では、とかく国際関係の緊張部分が取り上げられ、友好的交流が滞っているのかと心配になります。そんな折、今井雅晴先生(筑波大学名誉教授)から、中国・大連大学で講義された冊子をご恵贈いただきました。今井先生は親鸞聖人研究の第一人者であることはご承知の通りですが、エジプトや中国等の大学で文化交流活動も長年熱心に取り組んでおられます。今回の冊子で、大連大学の日本言語文化学部教授の宋協毅先生が講演された内容がとても興味深かったので、ここに少し紹介させていただきます。
中国では千校ほどの大学が有り、大連大学はランキングで260位くらいですが、日本語専攻の学部では506学部中49位です。つまり大学としては中堅にあるのに、日本語専攻は上位にあると胸を張っています。そして就職率は12年連続100%です。その理由を、学部を創設したときから掲げているスローガン「日本語をマスター(勉強)して、いい人間になろう : 学好日語 倣个好人」にあるというのです。
宋先生によると、中国では経済が発展するにつれて生活はよくなってきたのですが、社会的な不公平が逆にはびこっています。一人っ子政策の影響で、親たちは本当の意味の教育が分かっておらず、子どもを甘やかす教育をするだけです。学校の成績さえよければいいんだ、家事や手伝いなど何もしなくともいい、自分が先に恵まれて、自分を先に考えて他人のことは考えなくてもいい、というエゴの塊のような学生がどんどん増えています。
宋先生の学部では、日頃から日本語を教えるだけでなく、日本語を道具にして、学生たちに人間としてやるべきこと、人間として進むべき道、その人となりなど人格形成の教育を日本語教育以上に大切だと思って実践しています。本当の意味での日本の礼儀作法、日本の文化を理解させたい、表面的なものだけでなく、その芯に入っている日本の文化、あるいは社会を支えているいいところを理解させて、自分自身を本心からいい人間になるために、仕向けたいと考えています。・・・さらにこのような精神から、「学生に依怙贔屓(えこひいき)は絶対にしない」、「公開、公平、平等の原則」を徹底して貫いています。・・・(今井雅晴編著「中国・大連大学日本語言学院の5日間」東国真宗研究所刊 2016 より)
中国でこれほどまでに日本が評価してもらえていることに驚き嬉しさを感じます。今井先生は、日本文化の背景にある仏教における人間観を学生への講義の中で述べられています;
「仏教では、人間ははるか昔の過去の世から生まれ変わり死に変わりしています。・・・・今、あなたの隣りにいる人はいずれかの世での父であったかもしれないし、母であったかもしれない。・・・他人と切り離しての自分はないのです。ですから当然、他人は大事にしなければなりません。」
「いい人間になろう」というスローガンは、日本の大学や職場などでは気恥ずかしくてとても掲げられないと思います。親鸞聖人であれば、「自分の心を振り返ってみれば、いい人間になろうとしても、到底なれそうもありません。」と苦笑いされることでしょう。ところが日本社会の現状は、このスローガンが、むしろ新鮮に聞こえてきます。廃棄処分したはずの食品が転売されたり、安全性を無視した高速バスの事故など、利己主義が広がり、日本の評判を落とすような恥ずかしい社会変化が起こっています。
「いい人間」とは素朴な表現ですが、「自分さえよければと考えない」、「人の迷惑になることをしない」「人のために辛抱する」「人を思いやる」など、世界中でこんなスローガンが掲げられたらいい。合掌
3月2日未明の大雪
天気予報でもこれほどの大雪になるとは伝えていませんでした。車の雪を落とそうと作業していると急に晴れ間が見えました。そこで写真を1枚。30cm物差しよりも10cmくらい多い積雪がありました。
これが1週間後にはすっかり消えてしまい。今屋根には雪がありません。春の日差しとぽかぽか陽気のお陰です。
斯うして寒暖を繰り返して本当の春になります。