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116号 感話:田舎をまもる [ 平成26年8月4日 ]

 盆参 長岡空襲 花火

116号 感話:田舎をまもる  八月は、盆参で始まります。同時に8月1日は長岡空襲のあった日です。朝8時と夜10時30分長岡市内の寺院で梵鐘が一斉にならされます。同じ時刻に追悼の花火が打ち上げられます。梵鐘を子どもたちと一緒に撞(つ)けたらいいと思っています。夜は保護者の方と一緒にいらしてください。
 2日と3日は長岡大花火大会です。この花火大会も戦災からの復興を祈願して始まりました。そして中越地震の後からはフェニックス花火が加わりました。私は今年マス席で見ます。何しろ長岡花火を有料席で見るのは昭和30年代中頃以来なのです。今からワクワクしています。


116号 感話:田舎をまもる  新潟日報では7月23日から「長岡空襲69年 語り継ぐ記憶」を連載しています。語り継がれている方は皆ご高齢ですが、その記憶は具体的です。2年前の暁天法座で佐田良輔さんが10歳で体験された「暑い夏の悲しい思い出」を語ってくださいました。日報の連載には佐田さんのお姉さん(穂刈トミさん(90歳))の体験が紹介されています。今年の暁天法座3日目はNST(新潟総合テレビ)が6年前に特別制作した「語り継ぐ長岡空襲」を上映します。是非とも子どもさんお孫さんと一緒にご覧ください。
 言うまでもなく語られたことは実際にあったことなのです。空襲を計画した人、実際にB29に乗って爆弾を落とした人も家に帰れば家族がいたはずです。民家を火の海にしてその中を逃げまどう多くの人のすがたをどれほど想像できたのでしょうか。今イスラエル、パレスチナで繰り返される爆撃の応酬、ウクライナでもアフリカでも紛争が起きています。映像で銃を乱射しながら突進する姿を見ると、この銃弾に当たれば命が奪われるんだと改めて思います。
 武器を使わないで紛争を解決する方法はないのでしょうか。人類が叡智を絞っても実現しないことなのでしょうか。宮沢賢治の「北に喧嘩や訴訟があれば つまらないからやめろといい 日照りの時は涙を流し 寒さの夏はおろおろ歩き みんなにでくのぼーと呼ばれ 褒められもせず 苦にもされず そういうものに わたしはなりたい」(「雨にも負けず」より)のことばがもっと輝いて欲しいと思います。


感話 田舎をまもる

116号 感話:田舎をまもる  関越トンネルがまだひとつだった頃、お盆の帰りに大渋滞に巻き込まれたことがありました。田舎はお墓参りするだけでなく、楽しいことがたくさんありましたから、渋滞くらいは皆覚悟のことでした。その田舎が少しずつ、でも気がついてみると大きく変化しています。若い人たちは田舎を離れ、都会で仕事を求めます。田舎の家々はこのままでは絶えていきます。田舎が元気を取り戻すにはどうすればよいのでしょうか。
 7月半ば、大先輩のお仲間と「小黒の里」を訪ねてきました。親鸞さまと恵信尼さまの最初のお子様が「小黒の女房」と呼ばれています。小黒の地に嫁いだためにそう呼ばれたのです。小黒(こぐろ)は現在は上越市安塚区ですが、終戦後合併される前は小黒(こぐろ)村でした。終戦までの12年間、村長が聾唖者だったことでも有名な村です。村長は横尾義智さんといいます。親鸞聖人ゆかりの地「小黒の里」と聾唖者村長を生んだ「小黒村」は、私にとってはそれぞれ別個の知識でした。ところがその横尾家に所蔵されていた「光明本尊(阿弥陀さまを中心に描かれた掛け軸)」が、嫁ぐ娘のために恵信尼さまが持たせてやったものではないかと指摘する研究者がおられたのです。この研究はもう50年近く前のことですが、今知るところとなった私は、小黒の里を訪ねないではおれなくなりました。


116号 感話:田舎をまもる  訪ねてみると、横尾家のある行野集落は山の中に家が点在するといったところでした。こんなところにかつて百町歩を超える田畑を所有していた豪農のお屋敷があったとはとても思えません。横尾家は、農地解放後、田畑・家財の多くを手放し、いっときは小学校として使われていた旧邸も、児童数減少による廃校の後はすべて取り壊されています。現在遺っているのは記念館となっている米倉庫だけです。そもそも100軒ほどだった集落が、今は20軒にまで減っているのです。これが過疎の実態なのだと改めて思いました。


116号 感話:田舎をまもる  行野集落から2,3kmほど離れた小黒集落には横尾家の菩提寺である浄土真宗大谷派専敬寺(せんきようじ)があります。この地の文化を象徴するようなお寺さんです。明治20年建立の18軒四方の大本堂と、それに劣らぬ大きさの築200年を超える庫裡が小高い山の中腹に静かに堂々と建っているのです。間違いなくこの地には、近年まで親鸞聖人の時代から続く豊かな文化と生活の賑わいがあったのです。ご住職とたったお二人でまもっておられる坊守さまにお御堂を見せていただきました。黒板の文字、外陣におかれたたくさんの出版物は、ご法義が今でも盛んであることを感じさせてくれました。帰り際に坊守さんが、来年には寺の跡取り息子が高校の教員を辞めて帰ってきてくれるのですよ、と嬉しそうに話してくださいました。小黒のお寺さんには若い息子さんご家族がきっと希望と夢を抱いて戻ってこられるのです。小黒の里のこれからを楽しみにし、また訪れたいと思いました。合掌


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