113号 感話:ふっと さみしくなりました [ 平成26年5月8日 ]
お取越し報恩講の御礼
大勢の方々にお参りいただきありがとうございました。前日には五色ののぼりと幕を掛けて、寺のお祭りを盛り上げていただきました。ご講師真敷祐孝さんのご法話に「居場所」がありました。いのちが終えて往く居場所はお浄土ですが、お浄土が定まると今の居場所も定まるのだとお聞かせいただきました。「寺参りを私の居場所にさせてもらっています」とお斎の席で声掛けしてくださった方がありました。嬉しいお言葉でありました。
特別展「親鸞となむの大地」開幕
いよいよ「なむの大地展」がはじまりました。24日にはオープニングセレモニーが開催され、主催3団体(県立歴史博物館、新潟親鸞学会、新潟日報社)の代表者および本願寺派園城義孝総長、森民夫長岡市長らがテープカットを行いました。県立歴史博物館が平成12年に開館してもっとも大きな企画展であるそうです。私は内覧会で観賞させていただきましたが、国宝や重要文化財を含む200点近くの法宝物が、章立てされたテーマにそって展示され、イヤホンで聴ける解説もついていてレベルの高い展覧会であると感じました。注目の恵信尼様のお手紙は痛みが少ないのです。これが750年前のお手紙かと感慨深いものがありました。
このオープニングにあわせて「なむ街道を歩く25日間の旅」全行程550kmを完歩した17名が大勢の人たちに出迎えられ、感激のゴールを果たしました。
写真はゴールして挨拶されている北海道のご住職。
最終日、デイリー隊に託念寺からも4名が参加されました。
<お知らせ(歴博HPより)>
1.井上雄彦氏作・屏風絵『親鸞』 特別展示
漫画家・井上雄彦(いのうえたけひこ)氏は、「スラムダンク」の著者として有名です。
この屏風絵は、2011年に真宗大谷派が、宗祖親鸞聖人750回忌の記念事業の一つとして井上雄彦氏に制作を依頼したものです。この度、東本願寺より借用できるようになったものです。
展示期間 5月3日〜5月11日
展示場所 県立歴史博物館 展示棟地下1階図書コーナー
2.日本画家畠中光享(はたなかこうきよう)氏の屏風絵 特別展示
1)作品名 『逆さ竹林の親鸞』
展示期間:全期間 展示場所:企画展示室前ロビー
2)作品名 『帰去来(往相・還相)』
展示期間:4月26日〜5月2日、5月13日〜6月8日
展示場所:展示棟地下1階 図書コーナー
写真は畠中先生と帰去来の屏風絵の前で撮らせていただいたものです。
感話 ふっとさみしくなりました
犬 詩:金子みすゞ
うちのダリアのさいた日に,
酒屋のクロは死にました。
おもてであそぶわたしらを,
いつでもおこるおばさんが,
おろおろないておりました。
その日,学校でそのことを,
おもしろそうに,話してて,
ふっとさみしくなりました。
金子みすゞさんの気持ちがわかると思われた方は多いのではないでしょうか。そして同時に「恥ずかしい」とも。
私たちのこころの中をのぞいてみると、おばさんを思いやらなければという気持ちと、思いやることができない自分がいることに気づきます。悲しい気持ちを共有しきれないもどかしさです。
韓国の大型客船沈没のニュースでも同様です。
親鸞様はご自分にとても厳しい人でした。歎異抄に「慈悲」について2つのあり様が述べられています;一つ目は、困っている人、苦しんでいる人がいれば、ともに悲しみ、励まして助けることである。でもこれが本当に可能になるのは極めて稀なことである。もう一つは、お念仏をして急いで仏になって仏の慈悲心で思い通りに助けることである。私たちが生きているこの世では、嘆き悲しんでいる人のことをどれだけ不憫に感じても、助けきることはできない。相手に寄り添おうと思っても最後まで徹しきることはできない、所詮は中途半端に終わってしまうものだ。だからお念仏して仏になることが本当の慈悲といえるのだと。
一見、冷たく感じるほどの内省です。でも親鸞様の本音は「苦しんでいる人に思いを寄せようとしても寄せきれない私です。ごめんなさい。」だと思うのです。東日本大震災では多くの方々が被災されました。少しは力になりたいとさまざまな形で支援はしたけれど、テレビの映像等でわが子を亡くした親の思いなどを目にすると、どうすることもできない無力さを感じられた人も少なくないと思います。そんな自分を振り返ると「ごめんなさい」としか言えません。
これが、私たちの限界です。自分の限界を自覚して、仏さまのお慈悲のありように気づくのです。今は不完全でも、お念仏して仏さまにさせていただけるなら、どこか安心できるように思います。すでに仏になられた有縁の方々にまもってもらっている我が身に気づけば安心を覚えます。合掌