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96号:感話:手を打てば 鳥は飛び立つ [ 平成24年12月4日 ]

冬支度

96号:感話:手を打てば 鳥は飛び立つ  野外の風雨が冷たい音を発して、冬の到来を告げています。
 11月10日、恵以真会会員とOBの方々により境内の冬囲い作業をやっていただきました。冬囲いは見た目も大事です。それぞれが持ち場でその技術を発揮してくださいました。完成した自信作の前で記念撮影を行いました。清々しい表情でしょう。25日には本堂玄関の雪囲いも無事に終えました。ご多忙の中をご協力いただき心より感謝申し上げます。これで雪がいつ降っても安心です。


お風呂の仕合わせ

 猫も可愛いのですが、孫は理屈抜きに可愛いです。ホントにホントです。11月23日、24日と連休を利用して埼玉に住む長女家族を訪ね、孫3人と秩父ミューズパークに1泊2日の時間を過ごしました。温泉は男女別ですから、日頃から「お母さんがいい」と一緒に入ってくれない長男次男が私と2回もお風呂をともにしました。ただ孫と お風呂に浸る それが仕合わせ かけがえのない 仕合わせ(五七七七四)。


託念寺の過去帳

 お仏壇に過去帳がありますか?お葬式に参列されると、お位牌が故人の遺影とならんで阿弥陀さまの下に置かれます。お位牌には、法名、ご命日、俗名、喪主との続柄、行年などが記されています。お葬式に使うお位牌は白木のもので多くは49日忌(満中陰)法要が過ぎると役目を終え、その後は「繰り位牌」に書き写して収めるか、その家の過去帳に転記して仏壇に置くようにしています。本山では過去帳を薦めています。
 寺では、亡くなられた方の記録を過去帳に残しておきます。お正月に年忌法要の案内をするときは過去帳をひもといて書き出しております。したがって寺にとってはいわば最重要文書です。家の先祖をたどりたいというときには市役所の戸籍で調べることもできますが、寺に古い過去帳が残されている場合にはその情報も貴重なものとなるのです。
 託念寺の過去帳は、明治14年2月14日の火災で焼失されてしまったので、それ以前のものは断片的なものだけです。逆に明治14年以降は全て記載されていると思われます。今過去帳を電子化してパソコンに保存する作業を少しずつ行っていますが、年間の記載数はかなりばらつきがあります。過去百年くらいを平均すると1年に10名くらいでしょうか。その中で明治22年、23年は何があったのでしょう。2年間で46名のお名前が記されています。その半数近くが子どもまたは未成年です。どんな時代でも子どもを亡くした親の切なさは同じだと思います。ちなみに昭和20年は38名のお名前が記されています。


感話  手を打てば 鳥は飛び立つ 鯉は寄る 女中茶を持つ 猿沢の池

 五七五七七の語並びは心地よく響きます。11月25日新潟教区仏壮研修会でのご講師菅純和さん(月刊誌「御堂さん」編集長)のお話がこの歌からはじまりました。猿沢の池は、奈良興福寺にあって五重塔や寄ってくる鹿でも有名です。茶屋の前で、人が柏手を打てば、その音に驚いて、鳥は飛び立ちますが、池の鯉は餌がもらえると思って寄ってきます。茶屋からはお客さんかと、お茶を持って店員さんが愛想よく出てきます。ひとつの出来事が、受けとめる人によってまるで違う意味をもたらすということを譬えているのです。もともと法話に使われてきた歌なのだそうです。菅さんはキンモクセイの香りを例にこんなお話しをされました。


 10年前に息子さんを突然亡くされた方がありました。自死でした。ひとり住まいだったので報せを受けて遺体を引き取り慌ただしくその地で火葬して、戻ってお葬式を行いました。菅さんは、そのあと月ごとの命日に読経するご縁を続けてこられました。普通であれば、どれほど切ないことであろうかと思うのにこの母親は涙を見せることがありませんでした。息子さんのことをお話しになるのにも淡々としておられ、それがむしろ違和感を覚えるほどでした。10年経った去年の秋、いつものように寄せていただくと部屋の外からキンモクセイの香りが気持ちよく漂ってきました。すると彼女は急に立ち上がり部屋の窓をすべて閉じられ、目にはたちまち涙があふれてきました。こんなことは今までなかったので訳を尋ねると、10年前、葬式、死亡の手続き、友だちへの通知など時間に追われ、やっとのことで片付け終えた部屋で腰を下ろすと、キンモクセイの香りがどこからか漂ってきました。するとこれまでの緊張が解けたのか「息子はいったい何を苦しんでいたのだろう」、「何があったのだろうか」、「どうして気付いてやれなかったのだろうか」、「防ぐ手だてはなかったのか」と次々に悔しさや自責、悲嘆の思いがわいて、涙が止まらなくなったのです。今でもキンモクセイの匂いを感じるとそのときの感情がよみがえるのです。と答えてくださいました。彼女は今年の初めにガンで亡くなられたのだそうです。
 菅さんにとってもキンモクセイはただいい香りを運ぶ花ではなくなっているのだと思いました。合掌


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