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95号:感話「恵信尼さまの手紙」 [ 平成24年11月1日 ]

冬が間近

95号:感話「恵信尼さまの手紙」  10月のひと月で一挙に秋が進みました。朝晩の寒気、日中の爽やかな晴れ間、柿やリンゴ、落花生にサツマイモ、サトイモなど秋の味覚を楽しませていただいています。でも季節の変わり目は体調への気遣いも必要です。我が家の愛猫トラコは、猛暑の夏も寒さを体感する今も、着物に頼らず自前の毛皮一枚で適応しています。動物の力強さに感心します。


95号:感話「恵信尼さまの手紙」  10月のある日曜法座のお茶の席でこんなお話しがありました。私たちは阿弥陀さまから「みんなちがって みんないいんだよ」と聞かされています。戦国時代の天下人(てんかびと)3人の性格をホトトギスで表現した川柳はとても有名ですが、「鳴かぬなら それでいいじゃん ホトトギス」は、「みんなちがっていい」の心をうまく表現しているのではないでしょうかと。それを聞いて「鳴かぬなら 買ってこよう ホトトギス」という句もあるんですよとお隣から発言がありました。なかなかうまく言うものですね。あとでインターネットで調べてみると「鳴かぬなら 取説(とりせつ)みろよ ホトトギス」まで載っていました。鳴かないホトトギスであっても愛情を注いで育てると、その人にはかけがえのないホトトギスになっていくように思います。


感話 恵信尼さまの手紙

 手紙をワクワクして待った一時期がありました。その手紙は40年近く経た今でも大切にして保管してあります。でも私が亡くなってしまえばきっとどこかに行ってしまうことでしょう。どんな大事な手紙でも750年間保管されていたのは奇跡です。恵信尼さまがお書きになった手紙です。


95号:感話「恵信尼さまの手紙」  親鸞様が亡くなられた時それを看取られた末娘覚(かく)信(しん)尼(に)さまが、越後におられた母親恵信尼さまに手紙でお知らせになります。父上様が本当に極楽に御往生されたのか心配であることがそこに記されていたのでしょう。それに答える形の文面です。かなり長文のお手紙ですが無駄な部分がありません。今の時代で考えれば、夫の訃報に接したのですから、最期まで看取ってくれた娘に労(ねぎら)いのことばをかけ、寂しさや悲しみを共にする文章を想像します。ところが最初から核心に触れた内容です。父上様がどうして法然上人のもとへ行かれ生涯のお師匠とされたのか、その経緯がまず述べられます。また後年関東の地にいたとき、阿弥陀堂落成供養の夢を見て、お堂の前にかけられている2枚の仏様の絵に出会います。ひとつは姿が見えず光だけのもの、もう一枚は確かに仏様の顔をしておられました。これはどなたかと尋ねると、光だけの仏様は法然上人で勢至菩薩の生まれ変わりでいらっしゃいます。もう一つの仏様は観音菩薩であなたの夫親鸞様でいらっしゃいますよ、と教えられたように思い夢から醒めました。それからはずっと親鸞様を観音菩薩の化身と心に深く思って信心を共にしてきたので、極楽往生のことは心配しなくても大丈夫であると結ばれているのです。恵信尼さま82歳のお手紙です。すごい迫力です。


 今井雅晴先生が出版されたばかりのご著書(法蔵館 2012)を送ってくださいました。それもお手紙つきで。今井先生のお手紙も私にとっては宝物で全てがファイルに綴じてあります。
 ご著書を読み出すと、興奮した気持ちが収まらず、最後まで読み終えました。恵信尼文書とか、消息と言われ、何度も目にしてきたのにお手紙全文(10通)をしっかりと読んだことがなかったのです。恥ずかしいことです。古文書は難しいとどこか思い込んでいたのかも知れません。今井先生のご著書がすばらしいのです。原文、現代語訳が、今井先生の解説によって初心のものでも読むことができます。このお手紙が親鸞聖人を知る上でどれほど重要なものであったか、また聖人の生きられた時代がどんな様子であったのかさまざまに学ぶことができるのです。
 来年の新潟親鸞学会総会で今井雅晴先生の基調講演が決まりました。平成25年6月6日です。恵信尼さまのことにたくさん触れてくださることでしょう。その前にこのご著書を一緒に読み、勉強する機会を設定したいと思います。またご案内いたします。合掌


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