90号 感話:ごめんな [ 平成24年6月6日 ]
衣替えの6月です
田植えがほぼ終わり水田(みずた)が広がる景色がきれいです。これからは苗が伸びて少しずつ緑の色を増やしていきます。この陰には、天候を気にしながら毎日のお世話をかかさない農家の方々の努力があります。前島町の春祭りでの会話です;
「毎朝、仕事に出かける前に1時間くらい水を見たり、草取りをしたりします。」
「一体何時に起きるのですか。」
「5時前には起きないと間に合いません。」
これをずっと続けてこられているのです。すごいお仕事です。
映画「この空の花」を観てきました
長岡に住む私たちにとっては映画にうつる山や川、街の景色だけでも満足感を覚えます。テーマは長岡空襲です。昭和20年8月1日夜10時30分から深夜にかけて、B29の大編隊がおびただしい数の焼(しょう)夷(い)弾(だん)を落として街を焼き、1,480名の命を奪ってしまいました。そのひとり1歳半の女の子が、逃げまどう母親に負ぶわれた姿で亡くなりました。女優富司純子が語り伝える話に涙がこぼれてしまいます。
映画の中では、長岡空襲で夫とはぐれてしまってリリ子さん(富司純子)がひとりでわが子の最期を看取ります。その翌日遺体を抱いて放心状態で歩いているところに、妻を捜している夫が現れます。この夫婦にとってわが子の死はどれほど切なかったことでしょう。無言で向き合う二人は、互いに悲しみをいたわり合う。そんな姿に見えました。モデルになった七里アイさんは、ご主人と長いこと、亡くなった娘さんのことを話題することがなかったそうです。
まだご覧になっていない方、どうぞお見逃しなさらないように!
あの感動をふたたび 金子みすゞコンサート
元上組夏のビッグイベントは「さわやか講話会」です。これまでも著名な方をお招きして多彩なお話しをお聞きしてきました。今年は歌とお話しです。お二人のすばらしい歌声を楽しみにしております。どうぞお誘い合わせの上ご参加ください。
昨年のコンサートで好きになった詩をひとつご紹介します。
犬 詩:金子みすゞ
うちのダリアのさいた日に,
酒屋のクロは死にました。
おもてであそぶわたしらを,
いつでもおこるおばさんが,
おろおろないておりました。
その日,学校でそのことを,
おもしろそうに,話してて,
ふっとさみしくなりました。
感話 ごめんな
絵本は大人のこころも感動させてくれます。特別支援教育の教員をめざす学生とともに味わっている「ゴンタとカンタ」(つちだよしはる著PHP研究所刊2004)を紹介します;
クマの兄弟ゴンタとカンタは同じ小学生だけれど別々の学校に行っています。ゴンタ兄ちゃんは5年生、耳の聞こえにくい学校へ行っています。カンタは2年生で普通の学校に通っています。カンタはあまり兄ちゃんのことを話しません。教科書に「きょうだい」と書かれていると、ドキドキします。お家では兄ちゃんが少し乱暴できらいです。でもこのごろはすこしやさしくなったかも・・・。
ゴンタは運動が得意でケンカもつよい。絵も上手。カンタは運動もケンカも絵もきらいです。
カンタの小学校で学園パーティが開かれたときのことです。ゴンタの学校のみんながきたのです。ゴンタが代表して話しました。「ぼくたちは耳の聞こえにくい子どもたちの学校に通っています。補聴器をつけて、口の形や表情から人の話を読み取ります。だからぼくたちと話すときは、顔を見せて話してください」と、ゴンタがいうと、「全部つかって聞くんだね」「すごいね」とカンタの友だちは話し合っていました。でもカンタはずっと下を向いたまま、ドキドキしていました。友達がカンタを見て「にてるねぇ」といっても「ぜーんぜん ちがう」と答えて逃げていきました。
その夜。カンタがテレビを見ていると、ゴンタが「今日はごめんな、カンタの学校に行ってしまって・・・」と言って、部屋を出て行きました。カンタはおどろきました。いつもは乱暴な兄ちゃんがなんでだろう・・・。兄ちゃんは耳が聞こえにくいからいじめられた。だからケンカは負けない。絵も運動もがんばってきた。兄ちゃんは聞こえる人と聞こえにくい人の両方の気持ちがわかるようになったんだ。
次の日の朝。いつもは別々の学校に、別々にいくけれど、今日は「おにいちゃん、まってー」
カンタは思った。「いつもはなれて歩いていたけれど、もっと近づいて歩くよ、にいちゃん」
こころが通じ合えたそのとき、ひとはよろこびを感じます。合掌