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83号 感話:元気を生み出す [ 平成23年11月6日 ]

自然と災害

83号 感話:元気を生み出す  10月は比較的温かく穏やかに推移しました。しかし目を遠くに転じるとタイでは洪水でアユタヤやバンコクで広い地域が浸水し、それがじわりじわりと拡大しています。バンコクには何度か行ったことがあるので見知った場所が映像にでると深刻さが身近に感じられます。日本の洪水とは違い水が容易に引かないようです。早く収まってほしいと思います。トルコでは地震が起きて建物が崩壊し、多くの死傷者が出ています。自然災害とどう向き合えばいいのでしょう。昔の人たちは、自然を人知をはるかに超えたものとしてとらえ畏れだけでなく敬いをもってみていました。今の人たちは人間の知力と技術で自然災害に立ち向かおうとしています。何とか抑え込もうと懸命になります。タイの洪水を報じる映像で感じたのですが、市民の表情がどこか落ち着いています。日本で洪水と言えば、怒濤の如く流れる濁流や人びとの疲弊困窮の姿がイメージされます。バンコク市民の「慌ててもしようがないと構える姿」が印象的でした。とは言っても深刻さが日ごと増しています。早く収まって欲しいと願っています。


感話 元気を生み出す

83号 感話:元気を生み出す  瀬戸内寂聴さんが東日本大震災で被災された方々を励ますために東北各地で青空説法をされています。その様子がNHKで紹介されていました。89歳でなお能動的に活動されている姿に心が打たれます。陸前高田市では東京から毎週ボランティア活動に参加している青年男女と語り合っておられました。ボランティアに参加することになった動機などをひとりひとりから話してもらったあとで、「皆さんのやっていることは無償の奉仕です。無償の奉仕は忘己利他の行いです。利己的な心を離れ、利他の心を実践することですね。宗教の神髄はこれですべてなのです。これは人として最も尊い行為なんですよ。」と寂聴さんが話しかけると青年たちは目を輝かせて聞き入っていました。自らの行為を「尊い」ということばで讃えてもらったことにたいそう感激しているように、私には映りました。日常の仕事や活動はそれぞれに必ずしも順調にいっているわけではないけれどボランティアに参加しているという人もいました。


83号 感話:元気を生み出す  前回の感話「浄土門の慈悲」を再び持ち出せば、「尊い行為」は、自分の心の中をのぞき込むと本当はそれほど純粋なものではなく、褒められたら逆に恥ずかしいと素直に喜べないものも感じます。それでも寂聴さんと青年たちのやりとりに心を打たれました。89歳でもうからだが動かないと思っていたのに、大震災の日を境にじっとしておれなくなって、被災している心を少しでも励ましたいと行動される寂聴さん。自分にできることを少しでもして役に立てたら嬉しいと活動する青年たち。「尊い」ことだと思いました。すごいなと思いました。こうして人の心を動かすのだ、元気を作っていくのだと思いました。


83号 感話:元気を生み出す  もう一つの場面、岩手県二戸市天台寺で小雨降る中傘をさして集まった大勢の前で説法が始まりました。「私には不思議な力が備わっていて、こんなふうに雨が降っていても私が『えぃ!』とかいうと雨がやんだものだけど、最近はだめね、そんな力が無くなってしまいました。もう私のいのちも終わりに近づいているのね」とユーモアを交えると一瞬のうちに場が和んでいきます。「人はだれでも一人で生まれ、ひとりで死んでいかなければなりません。どんなに愛し合っていてもひとりで死んでいくしかないのよ。でもね、だから生きているときに人と絆をつくるの。人のことを思い、人と支えあいながら生きていくのですよ。」


83号 感話:元気を生み出す  お話しが終わったあと、聴聞者の女性が「私の夫は消防の仕事をしていて津波に呑み込まれました。私たちの家も失いました。夫はひとりで亡くなってどんなに寂しかっただろうと、いつまでも気持ちがそこにとどまっていました。でも『誰でもひとりで死んでいかなければならない』と聞いて気持ちが楽になった気がします」と涙ながらに話されました。寂聴さんは肩を抱いてただ「だいじょうぶよ だいじょうぶよ ご主人の魂はあなたのところに還ってきていつも一緒よ」と伝えられました。
 宗派は違うけれど私たちが還相(げんそう)のほとけさまと呼んでお聞かせいただいていることと同じ事を説法しててくださる。これが元気を生み出すご説法だと手を合わせました。合掌


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