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82号 感話:浄土門の慈悲 [ 平成23年10月4日 ]

夏から秋へ

82号 感話:浄土門の慈悲  9月18日の夜を境に夏から秋の空気にすっかり入れ替わりました。こんなにはっきりと季節が移ることも珍しいと思います。一日で12℃くらい下がってしまうのですから体の調子が狂ってしまうと嘆く声が聞こえてきます。でも秋の空気は気持ちがいいです。実りの秋でもあります。美味しいお米や果物をいただいていますが、体重計にはしばらくのらないで自然の恵みに感謝いたしましょう。

 写真は信濃川土手から金倉山を望んだ風景です。4日久しぶりに空気が澄んで山がきれいでした。


家族礼拝の日 御礼

82号 感話:浄土門の慈悲  大勢の方々にお参りいただいて「いのちの色えんぴつ」を鑑賞しました。

<人間のはかなきこと老少不定のさかい>
「ぞうさん」のまどみちおさんは、明治42年生まれ102歳で今もお元気です。

「みんなちがってみんないい」の金子みすゞさんは、明治36年生まれでまどみちおさんより6歳年上ですが、昭和の初め、もう80年も前に亡くなられました。そのとき26歳でした。

「いのちの色鉛筆」の豊島加純さんは12歳で亡くなられたのですが、12歳の時クラスメイトひとりひとりみんなちがっていいんだとすてきな詩を遺されました。


9月11日 半年と10年

82号 感話:浄土門の慈悲  9月11日はアメリカの同時多発テロの事件からちょうど10年、東日本大震災から半年、託念寺では日曜法座に40名近くのお参りがありました。一同で追悼のお正信偈をお勤めいたしました。
 前日にこんな記事が新聞に載っていました。「福島の産品を応援する福岡市の企画が、『放射線をばらまくな』といった抗議で中止された。一部の声としても、東北との悲しい隔たりを突きつけられた思いだ。23.9.10 朝日新聞」 そして9月18日には愛知県日進市で東日本大震災の被災地復興支援を目的に掲げた花火大会で福島県川俣町で作られた花火が取り除かれて開催されたと報じられました。情けなく、さみしい気持ちになりました。みんなで復興を支援しようと言っても、わが身はほんのわずかの可能性でも放射能に汚染されたくないという行動をとるのです。そんな人は割合からすればごく少数派だから主催者側はきちんと説明して予定通りに実行できたと思われるのに、そうはしませんでした。福島で今生活している人がたくさんおられる現状をどのように見ているのでしょうか。痛みを分かち合う、苦しみや悲しみに寄り添うことのむずかしい現実を突きつけられた思いがしました。


感話 浄土門の慈悲

82号 感話:浄土門の慈悲  9月の「み教えに学ぶ会」でのことです。このときのテーマは浄土真宗における慈悲でした。歎異抄に出てくるお話しがテキストです。私たちは、困っている人がいれば哀れみの心をおこし施しを与えようとします。これは一見善いことのように思われますが、そんなごく自然な「慈悲」の姿を親鸞聖人は否定的にとらえておられるのです。私たちがどんなに哀れみのこころを強く持っても、困っている人に自分の全てを与えることはできない、自分がどんながんばったところで苦悩している人を救いきることなど到底できないと説かれているのです。聖人は私たちが施しをする行為のこころ根を見抜いておられました。自分は安全地帯を踏み越えようとはしないし、施す側の優越感や自己満足を完全に否定することはできません。そんなことを話し合っておりますと、参加されていたご住職が「私のところによく物乞いをする人が来るのだけれども、私はすっきりしない気持ちでわずかな金銭を渡してしまっています。いつも晴れない気持ちが残るのです」とおっしゃいました。私たちが暮らしている社会では困っている人の有り様は同じではありません。物乞いをする人も社会の弱者に相違ありませんが、私たちはどんなことができるのでしょうか。ご住職は「僧侶なんていっても何にもできない」と自嘲気味に付け加えられました。


82号 感話:浄土門の慈悲  家に帰ってふと以前読んだことのあった「ツルゲーネフ『物乞い老人』の逸話」を思い出しました;
 寒い日の夕暮れツルゲーネフは、町のほとりの橋のたもとでひとりの物乞いをする老人に出会った。その老人は寒さに震えてうずくまっていた。ツルゲーネフはポケットの中を探してみたけれど、お金は一銭もなく、人に与えるものも何もなかった。しかしその場から黙って通り抜けることはできなかった。
 彼は、震えている老人の前で膝を折って「友よ」と呼びかけた。老人はそのことばに驚いて顔を上げた。「あなたに差し上げるものは何一つ持ち合わせていない。許しておくれ、せめてあなたの冷え切った手をあたためて進ぜよう」と語って老人のしわがれた手を両手に挟んでしばらくの間あたため続けたのです。老人はぽろぽろと涙を流しながら「私は今までこんな素晴らしい施しを受けたことはありません。ありがとうございます」と何度もお礼を言った。
 あとでツルゲーネフは「私もあの老人から素晴らしい施しを受けた」と述べている。(藤沢量正著「彼岸法話:ダーナ −弱者や病者にことばを−」から)
 親鸞聖人が浄土真宗の慈悲の姿は「お念仏することしかできないのだ」とおっしゃっている意味に通じることなのかなと思いました。 合掌


前住職思い出原稿の募集

82号 感話:浄土門の慈悲  前住職が亡くなってちょうど1年になります。7月に開催された当寺世話方会議におきまして、前住職遺稿法話集を来年9月の3回忌法要にあわせて刊行することが決まりました。遺稿法話集は三章構成です;
第1章 住職30年の足跡(写真とともに振り返る)
第2章 遺稿法話集(恵以真会報や日曜法座等から編集)
第3章 前住職の思い出(有縁の方々に原稿を募る)
 そこで第3章の原稿を募集いたします。どうぞご寄稿下さいますようお願い申し上げます。
1.内容:前住職との思い出、こぼれ話、感化を受けたことなど。題名をつけてください。
2.字数:400〜800字
3.募集期限:11月末日
4.寄稿先:託念寺前住職遺稿法話集編集委員会 〒940-1147 長岡市前島町211
電話・Fax:0258-22-2998      
E-mail:maeho44@crocus.ocn.ne.jp   
直接のお届け、郵送、Fax、E-mailいずれも可能です。


 写真はご門主様の組巡教の折のものです。若きご門主さまと。


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