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第64号(感話:貧しい心のままで) [ 平成22年4月2日 ]

新規の4月

第64号(感話:貧しい心のままで) 四月は「ピカピカ」というイメージがあります。自然の営みもまた「新」という字が似合います。今年も前川小学校の卒業生が寺に感謝のお参りをしてくれました。新たな生活をまた元気でスタートしてねと願いました。境内地整備とトイレ改修工事はお取越に間に合うよう急ピッチで進んでいます。境内参入口に積まれた石垣はやはり「新」の装いです。思いを新たに共に歩みましょう。


ひげそり

第64号(感話:貧しい心のままで)  「ひとつひとつ肩書きを外す人生。」70歳を過ぎた頃、父の得意なことばでした。ひとつずつ肩書きを増やしていく時を経てこのことばが生まれたのでしょう。こう言っていた父はまだまだ多くの仕事をこなしていました。今年に入って私が父のひげそりをするようになりました。洗面器、タオル、石けん、ひげそりを持って父の所へ行きます。ちょっとばかりイソイソしたこころもちです。散髪屋さんになった気分であたたかいタオルで顔を覆うところからはじめます。ものの5分もすれば、無精顔がすっきりした顔に変身します。傍らの母は「美男子になったぃの」と冷やかしのことばをかけてくれます。父は「そうらか」と手鏡を持って満足そうな笑顔を浮かべます。私はこんなことが喜びなんだと、心の中で仕合わせを感じます。

写真は平成20年6月に祝ってもらった米寿のときのもの


前進座特別公演「法然と親鸞」

第64号(感話:貧しい心のままで)  法然上人と親鸞聖人はちょうど40歳の開きがあります。どちらも長命で法然上人は80歳、聖人は90歳で命を終えられたので50年ごとの大遠忌はいつも一緒にお迎えします。その特別企画として公演が続けられていますが、長岡公演が最終だそうです。まもなくチケットの割当がきますが、ご希望の方は住職宛お早めに申し込みください。


感話 「貧しい心のままで」

第64号(感話:貧しい心のままで) 我が身より 重症の人を 見る吾が目 なんて卑(いや)しい なんて哀(かな)しい (歌代房江)
 2月14日の日曜法座でこの歌を紹介し、この歌に共感して自分の心根を吐露した投稿欄を味わいました。多くのひとが、自分よりも不幸な人を見ることで自分のしあわせを感じているかもしれません。逆に自分が多少なりとも他より悪い待遇を受けると不満が高じます。中越地震のとき我が家の被害を嘆きつつも全壊した家を見て自分を慰め、見舞金の額を他と比べる心の卑しさを感じたひともいるでしょう。私たちにはいくつも恥ずべきことが心の中で動いています。投稿欄にある小林俊彦さんは、己の貧しい心が矯正できないことを情けないと恥じつつも「少しでも心を豊かにするように努める生き方をしたい」と結ばれています。


 先般届けられた福山市光明寺のご住職がこの歌を同じように取り上げておられ嬉しくなりました。光明寺寺報「願(がん)生(しょう)浄土3月号第133号」から引用させていただきます;
 「健康が一番、元気でなくっちゃ」といわれる社会、病気になっただけで世間から落ちこぼれたような劣等感を味わされる我が身、それでも自分より症状の重い方を見れば「まだまし」と自己を慰め、「気の毒に」と見下す。それが自分の本性だと気づかされる、愧(は)ずべき自分に遇った体験を歌われたものだと察します。
 彼女もまた、より軽症の人から見下されることも気づかされたことでしょう。娑(しゃ)婆(ば)を生きるということは、自己中心になり、自分の尺度、それもその時々に変わるモノサシを都合よく使って他を計りながら、自分の場所を探しながら生きるということでしかないのでしょう。
 ヒトに生まれさせていただいたということは、己を愧(は)じることができる人間にならせていただくご縁に遇えるということです。と同時に「しあわせにおなり」と願われていることに気づかされることです。「しあわせ」とは私が私である、という生き方ができる、すなわち他と比べるのではなく、他の「いのち」も私と同じく願われた「いのち」であることに深く頷(うなづ)かされることです。
 さらには、他の苦しみを知らなければならないということです。他の傷みに思い当たることは難しいことです。傷みを持つ人にしか分からない、ということに思いを致さなければなりません。
 発する当人には何でもない言葉が傷みを持つ人にどれほど辛い思いをさせるのか気づかなければなりません。気づかない私であることに気づかなければなりません。・・・(吉岡隆義 願生浄土133号)
 貧しい心に気づくことで、貧しい心のままで他を思いやる心が生まれるような気がします。合掌


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